整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

腰痛症の原因について

2014.06.14
カテゴリ:腰が痛い
前号にて、ひとが直立して歩行、生活する能力を獲得する進化の過程で、脊椎は、S字状の形態になっていったこと、またこのことが構造上の欠点であること、についてお話しました。

そこで今号以降では、その対処法についてお話します。つまり、日常生活で腰を痛めない方法についてです。

まず、第一に正しい姿勢を維持することが重要です。 第二には日常生活で腰に負担のかかることをできるだけ避けなければなりません。 さらに第三には腰を支える筋力を普段から鍛え、さらにその柔軟性を維持することが大切です。この三つのことを行うことが、日常生活で腰痛症を起こさないために重要なのです。

ここで、腰痛症を生じさせないための、正しい姿勢について考えてみましょう。よく姿勢を正しくするためにといって、腰椎を極端に反り返る姿勢をする方がいらっしゃいますが、この姿勢はかえって腰を痛める可能性があります。正しい姿勢とは、ひとの体重が最もかかる腰の部分の背骨をできるだけまっすぐにして立つことなのです。この姿勢を保持することができれば、姿勢による腰痛症をかなり防ぐことができるはずです。(図1)

57fig1

図1



 では、自分が立位姿勢で正しい姿勢をしているかどうかを簡単にみきわめてみましょう。それには、壁に背をつけて立ってみるとよく判ります。姿勢が悪く、脊椎のS字曲線が強いひとは、図2のようにお尻と背中は壁につきますが、腰のところでずいぶんと隙間があいてしまいます。このような方が、姿勢を正しくするには、そのまま両足を一歩前に出し膝を曲げて壁に背中をつけてみてから、お腹に力を入れて、へこませてみてください。腰のところで手のひら一枚がちょうど入るくらいの隙間ができれば背筋が伸びた理想的な姿勢と言えます。もちろん、体の硬さや筋力が人によって様々ですので、直ちにすべての方ができるわけではありません。

57fig2

図2



特に、お年寄りの方では、どうしても多少加齢による背骨の変形があるため、図3のように背骨の真ん中のところが丸くなっている事があります。背中が丸くなってきたからといって無理に姿勢を伸ばそうとすると、背中はそのままで、腰のところだけを反らせてしまい、かえって腰を痛めてしまうことがありますので、この点については特に気をつけてください。この場合には、時々、図4のように、畳やジュウタンなどの比較的硬い床の上でひざを曲げて上向きで横になってみてください。この時、深呼吸などをして力を抜いてみてから、すこしお腹に力をいれて腰のところが床につくようにすると、よい姿勢をしていることになります。最近、背中が丸くなってきたな、と思われる方は、試してみてください。

図3

図3



図4

図4



普段から腰を支える筋力をつけ、さらにその柔軟性をも維持する体操の方法については、次回にお話しすることにしましょう。