整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

骨は常に作り替えられている

2015.02.13
カテゴリ:骨
皆さんの体は、毎日少しずつ常に作り変えられていることをご存知でしょうか。体の全ての組織細胞はいつも新しくなっているのです。例えば、髪の毛も爪も毎日少しずつ伸びることにより新しい髪の毛に換わり、爪も新しくなっていることを日常生活でご理解いただけるところです。人の皮膚も毎日、お風呂で垢となって剥げ落ちながら、新しい皮膚に作り替えられています、しかし、いつも同じで変わらない様に見えるのは、新しい組織と古い組織が、コピーの様に同じものであるために、見た目には変わったようには見えないのです。

実は、骨の組織も常に作り替えを行っているのです。しかし、骨は他の組織とは硬い構造的特徴をなしているという点で、基本的に大きく違うところがあります、このため骨の組織の作り替えは他の組織とは少し違う方法で行われていることが、最近、知られるようになってきました。また、この点が加齢とともに骨粗鬆症を生じる大きな原因になっていることも解ってきました。

それではまず骨の構造を見てみましょう。

骨では、コラーゲン繊維の間にカルシウムを主成分とする石灰化した硬い骨量が見られ、骨の硬い構造の特徴をなしています。さらにその硬い組織の中に骨細胞が散在しております。では骨の作り替えは、どのように行われているのでしょうか。実は骨の作り替えは破骨細胞と骨芽細胞と呼ばれているふたつの細胞が行っています。

顕微鏡で骨組織をみると層板状になっている骨量の表面に骨の一部が溶かされて、そこに骨を溶かして吸収している多核の巨細胞が観察されます。これが破骨細胞です。その起源は基幹細胞で骨細胞と同じと考えられていますが、非常に早い速度で骨を溶かしています。

溶けた骨の部分には別の細胞が観察され、類骨組織を形成しつつ骨を形成しています。これが骨芽細胞です。この骨形成はゆっくりと行われているようです。最終的に骨芽細胞は、自分の周りに形成した硬い骨組織に取り囲まれて骨細胞になっていくわけです。こうして人の骨では、骨を溶かす破骨細胞骨を作る骨芽細胞の共同作業で常に骨の作り替えが行われているのです。

海綿骨内のリモデリング(骨内膜面での骨梁単位の新生)

ここで問題となるのは、年とともに骨を溶かす破骨細胞の機能が、骨芽細胞の機能を上回ってしまいやすい点にあり、このことが骨量が減少する原因となっていると言われています。現在、どうしても骨粗鬆症が進んできた方の治療薬として、世界中で注目されていてその効果が認められている薬に、破骨細胞の活性を抑えるビスフォスネート製剤がある理由もここにあるのです。でも、日々の生活で骨を丈夫にするように注意することが重要なことは、言うまでもありません。

また骨芽細胞が常に新しい骨を作っている訳ですが、細胞の老化のために同じような良い骨を作らなくなってしまうことも問題となります。家を作ってくれる大工さんの腕(骨芽細胞)が年とともに下手になってきているようなものだと考えられます。しかし、良い家を作ってもらうためには、檜などの良い材料(カルシウム)を十分に使ってもらい、少しでも良い家を作ってもらいたいものです。日々の生活で骨の材料のカルシウムやたんぱく質を十分に摂取して、さらに良いからだの環境を整えるために20分から1時間の散歩などの運動を毎日欠かさないことが重要なのです。