整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

関節のお話<関節の機能と構造>

2015.12.15
カテゴリ:関節
関節が老化すると、関節に痛みや変形を生じることがあります。そこで、どうしたら痛んだ関節を修復できるか。またどうしたら、関節の老化を予防できるのか、この二点について考えてみたいと思います。

老化した関節の修復と予防の方法を知るうえで、とても重要なのは、正常な関節の機能と構造を詳しく知ることです。少し難しいのですが、関節の機能と構造について詳しく調べてみましょう。

 

関節の機能と構造

関節とは、骨と骨のつなぎ目の動く場所ですが、組織として、関節であるためには、骨端部の表面には、軟骨組織があり、同時に、関節包が存在することが、関節であることの必須の条件です。関節包のない骨のつなぎ目は、関節ではありません。

図1は、典型的関節の構造について示しています。

66号院長図1

関節の構造を説明すると、関節は関節包(図の青色の部分)に包まれています。その関節包の内側には、滑膜(図の黄色の部分)という膜が、関節の内腔に張りめぐらされています。滑膜では、関節液をつくっています。関節包に分布する血管やリンパ管から関節液の成分を濾過して、さらにムチン様成分(ヒアルロン酸)を分泌することによって、関節液がつくられています。

関節液は、滑膜から、関節内部に排出および、吸収されています。これにより、関節内は、常に新しい、関節液によって満たされています。関節内の軟骨軟骨細胞(図の赤色の部分)は、関節液からの栄養と酸素を供給されることにより生きています。さらに関節が動く時には、関節軟骨表面が互いに密着し、こすれています。

この時、関節の潤滑に関節液が重要な役目をしています。常に軟骨表面が関節液に浸たっていることにより、磨耗の少ない、スムーズな動きが出来るのです。エンジンのオイルの役目です。



66号院長図2

上から、膝関節、股関節、足関節です。それぞれの白い部分が軟骨です。

 

次に軟骨組織について見てみましょう。(図3参照)

軟骨組織は、骨と骨の接触部分にある、表面の部分ですが、その構造は、コラーゲン繊維(2型)の網の目の中にプロテオグルカン複合体(基質)という白い物質が詰まっていて、その中に軟骨細胞が点在した構造です。その中には、神経も血管もない単純な組織ですが、関節液が浸み込むことにより生きて常に再生しています。

66号院長図3

 

次回は、この軟骨組織の詳しい成分と磨耗と再生の仕組み、および関節液の役割について、詳しく調べてみましょう。そこに関節の再生、修復のメカニズムが見つかるはずです。