整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

関節のお話 その5 変形性膝関節症治療のための運動療法

2016.10.14
カテゴリ:膝が痛い 関節
今回は、変形性膝関節症の治療のための、運動療法についてのお話です。

膝関節の運動が、関節軟骨の修復にとても役に立ち、重要である理由があります。その主な理由は、次のような事です。

 

理由その1 関節軟骨を修復するには関節を常に動かすことが必要

前にもお話をした通り、関節軟骨組織には、血管が無いので関節軟骨細胞への栄養は関節液が浸み込むことにより行われています。関節を常に動かすことにより関節軟骨内の軟骨細胞へ栄養が供給されるのです。実際に、骨折などでギプス固定により関節を動かさない状態になると、関節軟骨細胞が栄養不良になってしまうことが報告されています。実験的にも関節を動かすことによる関節軟骨の修復が認められています。

 

理由その2 膝関節は、伸展時に関節の安定が得られる構造をしており、膝関節の安定性には、関節周囲の筋肉の強化が必要

膝関節の構造が、脛骨上端の平らな面に楕円形の大腿骨の遠位端が転がる構造になっています。さらに、半月板がその間のクッションになっています。

構造的に、膝関節が体重を支える時の関節の接触面は、膝関節の完全伸展時に最も広く、逆に屈曲時は荷重を支える接触面が少なくなり膝関節に負担がかかります。膝関節の安定性は、膝関節の伸展時に最も得られ、この時の膝伸展筋の筋力がとても重要です。(図1)

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【おすすめの運動療法】

1 椅子に座って膝を伸ばして5秒~10秒間止める運動
膝の曲げ伸ばしを、体重をかけずに行うことが出来ます。伸展時、大腿四頭筋の収縮を5秒以上続けることで筋力強化がえられます。一日に4、50回を朝、晩2回ほど行うと効果が上がります。(図2)

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2 膝周辺の筋力強化

写真のような機具を使った運動がとても有効です。その人にあった重さ(負荷)を加えて運動すると、膝を伸展させる筋肉(大腿四頭筋)が鍛えられ、膝の安定性が得られます。(写真1)

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3 自転車こぎ
自転車こぎは 座って、持続的に、膝関節を動かすことになり、負荷を少なめで行えば、お勧めです。(写真2)
←リカンベントバイク

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4 歩行
無理せず、その人に合った適度な距離をなるべく平らな所で行えば、筋力強化と関節を適度に動かしますのでおすすめです。坂道や階段の上り下りは、逆効果になります。肥満の方は、膝を痛めることになりますので無理は禁物です。

5 水中歩行
体重のかからない運動は膝関節の修復にとても適した運動と言えます。肥満の人にもお勧めの関節に優しい運動になりますので、ぜひとも行いたい運動です。