整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

成長期のお子さんのスポーツ外傷 その3

2017.09.01
カテゴリ:スポーツ 肘が痛い 関節
前回は、野球肘にはいくつかの分類が存在し、その中でも特に離断性骨軟骨炎(OCD)は、早期発見と治療が必要であることをお伝えしました。
今回は、子どもたちを障害から守り、末永く野球を楽しめるように離断性骨軟骨炎の早期発見を目的とした集団検診の様子をお話したいと思います。

■青葉区の活動
脇田整形外科の所在する横浜市青葉区では、野球をする子どもたちを対象とする『肩・肘障害予防プロジェクト』という検診活動を毎年12月頃に行っています。
「自分のカラダのことを知る日」として横浜市青葉区少年野球連盟が主催するこの検診では、青葉区少年野球連盟に加入する全21チーム・全選手を対象としており、約600名の選手が検診に参加しています。



■検診の流れ
検診スタッフは医師約11名、放射線技師1名、理学療法士約15名、柔道整復師約3名、学生ボランティア約40名で構成されています。検診は、「理学所見・フィジカルチェック」、「エコーチェック」、「ストレッチ指導」という3つのブースをチームごとに移動して受診します。検診によって、肘の離断性骨軟骨炎や内側障害などの定期的な検査が必要と判断された選手に関しては、その後の指定先医療機関でのフォローを行えるよう体制が整えられています。続いて、各ブースの説明をします。

■理学所見・フィジカルチェック
理学療法士・柔道整復師による肘関節可動域検査、圧痛所見、肘のストレステスト、肩関節可動域検査、下肢可動域検査を行います。この検査の中で、子どもたちの障害が起こりうる可能性をみつけることが診断の一助となります。また、子どもたちのカラダを直接動かして検査をしますので、どこの部位の柔軟性が不足しているかを子どもたちに認識してもらい、日頃のセルフケアに繋げてもらう機会にもなります。

フィジカルチェック:選手の身体の関節可動域を測定し柔軟性などをチェックします。投球には下半身の柔軟性も重要です。



■エコーチェック
医師・放射線技師によるエコーを使用した検査が行われます。肘の障害を発見することが目的のため、左右の肘の検査を行います。毎年、離断性骨軟骨炎と診断される選手は疑わしい所見を含めて10名程いるのが現状です。また、無症候性の離断性骨軟骨炎も存在することや理学所見・フィジカルチェックでは明らかにできないこともありますし、時に、非投球側に所見がみられることもあります。

エコーチェック



■ストレッチ指導
選手たちが障害から自らの体を守ることができるよう、特に野球の投球動作において必要となる身体のストレッチの指導を理学療法士が行います。フィジカルチェックでの結果を踏まえながら、一人ひとりが自らに必要なストレッチを知ることができます。また、子どもたちだけでなく指導者や親の方も一緒にストレッチを行いながら、正しい方法や重要性を知っていただく機会を作っています。

ストレッチ指導:ストレッチする筋肉を意識して行うことが効果的です。



■まとめ
今回は青葉区における集団検診の紹介をさせていただきました。集団検診を通して、早期発見することはもちろんのこと、選手が自分の体の特徴を知っていただき、選手だけでなく指導者や保護者の方々とのコミュニケーションをとることにより、障害への理解を深め、選手たちの日頃の変化を感じ取れるようになっていただくことも大きな目的となります。
もしも、体に気になることがありましたら、無理をせず速やかに医療機関に相談しましょう。当院でも、ベースボールコンディショニングをはじめ、野球に積極的に携わっている医師、理学療法士が在籍していますので、いつでもご相談ください。