整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

五十肩 その1

2017.12.12
カテゴリ:首や肩が痛い
「肩」は上腕骨と肩甲骨を連結している肩関節のほか、鎖骨と肩甲骨の肩鎖関節、鎖骨と胸骨の胸鎖関節、肩甲骨と胸郭との肩甲胸郭関節からなる複数の関節により構成されていて「肩複合体」と呼ばれています。(図1)



複数の関節がかかわるので、どこかの部位が壊れても、始めのうちは痛みや関節の運動の異常に気づくこともほとんどありません。

たとえば、肩に何も症状のない人でも真上に手を挙げてみると、上がっている状態がそれぞれ違います。なかには、動かしているはずの肩が動かずに、肘を曲げてみたり、腰を一生懸命そらしている人もいます。(図2)



肩の痛みは関節を包む袋(関節包)の炎症、肩を動かす筋肉の腱(腱板)の損傷や断裂(図3)、石灰沈着などの原因で起こってきますが、「手を挙げると肩が気になる」というような人の肩関節は、少し無理をすると五十肩になる可能性もあります。もし、痛みなどの症状が出ているとすれば、肩関節は相当痛んでいると考えて良いでしょう。



そこで、症状が現れてしまった方はもちろん、症状を出さないように予防するためにも、肩関節に無理をかけないような使い方をしてあげることが大切になります。

肩に限らず人間の関節は普通の使い方をしていれば壊れることは少ないのですが、普通の使い方をしていると思いこんでいて、無意識のうちに長年にわたって無理をかけ、関節の中にすり傷や切り傷を付けてしまっている可能性もあります。

関節に無理をかけないために必要なことは、「ちゃんと思い通りに自分の関節を動かせているかどうか」を確認して、できていなければ、自分に適した治療や運動の方法を上手に選択して予防することです。

 

五十肩(肩関節周囲炎)

五十肩とはおおむね40代以降に肩が痛かったり動きが悪かったりする症状の病気につけられた俗称で、医学的には肩関節周囲炎といいます。この五十肩は年をとれば誰でもなる病気だから、ほっておけば直ると決めつけられがちですが、それは間違いです。

五十肩は中年の病気。しかし、新聞やテレビでバレーボールや野球の選手が肩に痛みを訴えて戦列を離れたり、手術をしている記事をみることもあると思います。このような選手の肩の状態と皆さんが肩に痛みが出た時に思い浮かぶ五十肩とは肩の関節の中の壊れかたはほとんど一緒なのです。

肩は一部分に負担が集中しないように、いくつもの部位に分かれて負担を分散させています。しかし、使い方が悪かったり無理が重なって関節の一部分が上手く働かなくなると、自分では気がつかない間に他の部分の負担が増してしまいます。そして、負担に耐えられなくなったときに初めて症状として現れるのです。つまり、野球選手のように肩にかかる負担が大きければ、年齢が若くても傷めてしまいますが、普通の生活をしていて関節にかかる負担がスポーツ選手に比べれば少なくても、負担が徐々に蓄積してくる40代以降には野球選手と同じように傷めてしまうわけです。

しかし、傷める場所も程度も人によって異なるので、予防するにしても治療するにしても自分にあった方法を選ばなくては効果が期待できません。大切な事は、自分の肩の状態を正しく認識する事ですが、これが意外とむつかしいので、まず、自分自身の肩の状態が本当に良好な状態を保たれているかを表1でチェックしてみてください。



該当する項目の点数の合計が10点以上の場合は、医師の診断が必要です

9点以下の人は次回の「肩のセルフチェックの方法」に進みましょう。

ただし、5点以上の人は無理をしないこと。

日常生活で痛みを感じるようならば、医師のアドバイスを受けるようにしてください。

 

次回は、肩のセルフチェックの具体的な方法です。

 

昭和大学藤が丘病院整形外科 客員教授 筒井廣明