整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

皮膚と整形外科との関わり

2012.04.13
カテゴリ:その他
皆様はじめまして。脇田整形外科リハビリ科で理学療法士をしております、山口耕平と申します。院長のピンチヒッターとして、今回このコラムを担当致します。

今回のテーマは“皮膚と整形外科との関わり” についてです。皮膚と病院との関わりというと、そもそもの皮膚科や形成外科のイメージが強いところですが、実はヒトの“動き”さらには整形外科に関する病気にも非常に関連があることが最近わかってきました。そんな最近の知見を皆様にお伝えできたらと思います。

“皮膚運動学”という理論が、世界で最初に皮膚と動きとの関係を明らかにしたもので、偶然にもこの理論の考案者が私の恩師でありました。そんな縁もあり、 “皮膚運動学”という専門書の出版にあたり、私も一部執筆協力させていただきました。ちなみに、インターネット本屋さん(AMAZON)での売れ行きは、出版から1年半たった現在、皮膚科学分野で3位、整形外科分野では8位で、医学専門書ではなかなかのベストセラー(笑)です。

その理論の中身を簡単にお伝えすると、“皮膚をある決まった方向に動かすとそれに応じてカラダも動きやすくなる”というものです。さらに要約すると“皮膚が自由に動く状態はカラダが動き易い”というような御理解でも結構です。身体の最も外側にある皮膚ですので、衣服に置き換えて考えていただけるとわかり易いかもしれません。窮屈な服や硬い服を着た時に非常に身体が動かしにくくなりますよね。

ですので、手術の経験のある方は傷跡を触れてみましょう。傷跡が硬くなっている方はその周囲を優しくしっかり動かしてあげてください。(注意!術直後の方は控えてください!)傷跡の部分は傷の回復の過程において硬くならざるを得ないため、先ほど述べたように皮膚の自由がなくなり、その結果カラダの動きも制限されることがあるからです。私の担当している患者様の中には、内臓の手術から何ヶ月か後に五十肩や腰痛になられた方が何人かいらっしゃいます。このような方々の傷は大体が硬く、患部の動きにはその悪影響が認められます。そして、その傷周囲の皮膚の動きや皮膚の伸び易さを少し改善させることで症状改善につながるケースが多いのです。

また、骨折や捻挫後にギプス等で固定した場合、その固定が外れた際には無理のない範囲で、その患部の周辺部位の皮膚に触れ、動かしてあげて下さい。これにより、固定に伴う関節の動きにくさの回復が格段に変わります。

皮膚には、触覚やいろいろな感覚を司る神経細胞がたくさんあるので、触れたり動かしたり刺激を与えてあげないと、本来ある細胞の機能が眠ってしまいます。そのため身体全体の機能も活き活きしてきません。ですので、カラダの調子の悪い部分にただ簡単に触れてあげるだけでも症状が変わってくることがあるはずです。病気やけがの処置のことを“手当て”と呼びます。また、ヒトとヒトとが心を通わせることを“触れ合い”といいます。これらは手でカラダに触れることの良さを明確に示す言葉です。まずは、自分のカラダに触れることから始めてみましょう!そして家族の背中の皮膚を優しくさすってあげて下さい!!家庭円満、効果絶大です。お試しあれ!!! (山口耕平)