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整形外科領域におけるCT撮影の有用性について

2019.04.22
カテゴリ:放射線部門

今回は、前回に引き続きCT撮影装置についてです。 CT撮影装置は瞬時に(10秒程度で)人の内部の状態を1mm以下の厚さで切った画像として見ることができます。このことは病気の診断にとても役立ちます。 さらにこの情報をコンピューターの中で再構築して、立体的な画像として見せてくれます。これを3D-CTと言います。   当院では16列マルチスライスCTを導入してからわずか3ヶ月ですが、病気の診断に役立つ多くの経験をしてきました。  

軽度の骨盤骨折の診断事例

Kさん(85歳の女性)は、数週間前に転倒してから腰部痛が持続して歩行できなくなったそうです。安静時には痛くないのに、椅子から立ち上がるなど体動時にとても痛がります。他院では疼痛の原因が分からなかったそうです。 X-P(普通のレントゲン写真)では腰椎の骨は、高度な脊椎の側弯変形はありますが骨折はありません。 股関節の骨折を探すため、骨盤のCTをもとに3D-CTを構成してみました。   すると、股関節ではなく仙骨部に亀裂骨折があることが分かりました。座り方を変えるなど仙骨部に負担がかからないように介護することにより、痛みも消え、まもなく普通に歩けるようになりました。  

肋骨骨折と疑われたが、肺の炎症による胸部痛と判明した事例

Sさん(73歳男性)は胸部を強打した記憶がないのに1週間ほど前から右前胸部が痛くて来院しました。 最初は、とくに呼吸器の症状がないのに肋骨部に圧痛があるため肋骨骨折が疑われました。そこでX-P(普通のレントゲン写真)で肋骨を撮影したところ、明らかな骨折は認められなかったため、今度は胸部CT撮影を行ったところ、肺実質から胸膜にかけての癒着と炎症が認められ、これによる胸部痛と診断されました。   他にもCTによって診断が明確にできた症例はたくさんあります。ここにあげたのはほんの一例です。また機会があればご紹介します。次回をお楽しみに。  

脇田整形外科 理事長 脇田正実 放射線技師長 石田勝也