整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

<番外編>熱中症

2013.08.20
カテゴリ:その他
今回は時節柄の話題として「熱中症」をテーマに、内科の専門医、あざみ野おさかべクリニックの刑部(おさかべ)義美先生に寄稿いただきました。

 

A:最初に熱中症のメカニズムとは?

人は汗が蒸発する際の気化熱で身体を冷やします。また熱くなった血液を気化熱で冷えた皮膚に送ることで温度を下げます。しかし、脱水状態になると体内の水分が減って汗をかけなくなりその結果身体に熱がたまり熱中症が発症するのです。

 

B:はじめに

気温の上昇に比例して救急搬送患者が増える熱中症、近年一番の猛暑だった2010年は約5万人が救急搬送され何と1万8千人弱の方が死亡しました。今年は7月現在、既に7千人以上が救急搬送され死亡者が2万人を超える可能性も示唆されています。とりわけ高齢者は重症化しやすく2010年の死亡者の約80%が何と65歳以上でした。

なぜ高齢者が熱中症に陥りやすいのでしょうか?

①   高齢者は暑さやのどの渇きに鈍感になっている。
この年齢の体温調整機能は20代の頃と比べると3分の1程度に低下し、汗の量が減り体内の熱の放散がしづらくなる。

②   心臓病、高血圧、肥満などの病気の方が多い。
これらの方が服用している薬剤で体内の水分を減らす成分も入っている物もあり、最初から脱水状態に近い状態になっている。

 

C熱中症になったら?

熱中症はに示すように軽症(Ⅰ度)、中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)と症状が進行していきます。軽症なら涼しい場所に移し横向きにして(嘔吐した時に気管への誤嚥を防ぐ)、水分補給、身体を冷やし汗はこまめに拭く、等の処置で対処できますが、中等症、重症では体温が40度以上、嘔吐、意識障害、呼吸困難となり自宅での治療は困難なため迷わず救急車を呼ぶ事を勧めます。

*お勧めの水分補給は麦茶です。麦茶はノンカフェインでナトリウム、カリウムといった汗で体内に不足してしまったミネラル成分が豊富です。さらに脱水症状が激しい時は吸収のスピードが超早い「飲む点滴」と呼ばれている経口補水液の「オーエスワン(OS-1)」がいいでしょう。冷蔵庫に2-3本入れておく事を勧めます。

表02 イラスト01 cl1_img



D熱中症のサイン

尿の色と量:薄い黄色なら大丈夫だが濃い茶褐色および尿意があるのに出ない、出ても尿量が減ってきたら要注意。

唾液量:唾がでにくいなら要注意

富士山サイン:手の甲をつまみ上げスーッと元に戻るのは大丈夫。富士山みたいな形が残ってしまい戻りが遅くなったら要注意。

 

E対策

外出時の帽子、日傘は必需品。Tシャツより襟付き服がベスト。

昔ながらのダボシャツ、ステテコ、甚平は煙突効果があり効果大。

温度と湿度が測れる温湿計は有効。

特に耳式体温計は深部体温が測れるため熱中症の診断にグッド。腋下体温計では汗で腋が濡れているため正確に測定できないこともあります。

イラスト02

 

まだまだ暑い日が続きます。

熱中症に負けないで元気に頑張りましょう。

 

あざみ野おさかべクリニック 刑部義美