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理学療法士のリハビリ記録 カルテNo.4

2019.12.20
カテゴリ:未分類
今回は当院の理学療法士(PT)の治療経験の一例をご紹介します。過度な筋緊張が改善され治療の効果が見られた症例です。皆様の機能の向上や治療に当たっているPTは、人体の機能と構造を日々勉強・研究しています。私個人的にもすばらしい症例報告だと思います。

医療法人社団裕正会 理事長 脇田正実


 

理学療法士のリハビリ記録 カルテNo.4

 「筋肉が勝手に働いてしまうことってあるんですね」 D様

タイトルの言葉は、実際にD様が仰っていたセリフです。筋肉が勝手に働くって言葉だけ聞くと少し怖い印象を受けますが、脳梗塞などによって脳と筋肉の関係が障害されることで起こりやすい症状なのです。

そこで、今回は脳梗塞による左片麻痺によって、立ち上がる際に、麻痺側に力が入ってしまうD様に行ったリハビリをお伝えします。写真①はその時の様子です。



写真①―3では、左下肢に力が入ってしまい、左脚が浮いてしまっていることや、体重のほとんどが右下肢にかかっていることが確認できると思います。この状態では、右脚だけで立ってバランスを取っているので、転倒する危険があります。

では、なぜこのように力が入りすぎてしまうのでしょうか。

脳は常に筋肉が過剰に働かない様にブレーキを掛けています(図1)。さらに右脳・左脳同士もスムーズに運動や情報処理を行うためにお互いにブレーキを掛け合っています(図2)。例えば、右手で物を触っているのに左手で触っていると感じない様に、働いている脳が反対の脳の働きを抑制しています。

しかし、脳梗塞などによって片方の脳の機能が低下することで、健康な脳にブレーキが掛からなくなり、障害を受けた脳はより強くブレーキがかかる様になってしまいます(図3)。すると、障害側の脳は筋肉へブレーキを掛けることを止められてしまう、、つまり! 筋肉にブレーキが掛からず、過剰に働いてしまうのです(図4)



この抑制を軽減するために、障害側の脳を強めに、または左右の脳を刺激し、同時に働かせる必要があります。そこで、写真②のように立ち上がりで脚が浮き上がってしまう、中腰の姿勢で左右に体重をかけ、左右の足の裏に荷重感覚を入れる練習を行いました。





すると、写真③では、立ち上がりの際の左脚の浮き上がりは抑制され、写真①と比較し、より左に荷重できています。これだと、両脚に体重を掛けて立てているので、転倒の危険が少なくなっています。

脳梗塞などによって筋肉に過剰な力が入ってしまう人に対して、闇雲に「力を抜いてください」と伝えても、力を抜けないことが多いです。しっかりとメカニズムを知った上でリハビリを行うことが重要です。

脇田整形外科 理学療法士 加藤 諒