整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

介護予防としての運動と栄養<第1回> 楽しいウォーキングから始めましょう

2013.02.15
カテゴリ:ウォーキング
現代日本は、長寿社会と言われるほど、人口構成が高齢化してきています。そして今後数十年はこの傾向が持続して、ついには日本人の三人に一人は高齢者となってしまうようです。

皆さんが年を取れば、加齢による身体機能の低下は避けられません。それでも、高齢者になっても、さらには80歳~90歳になっても、そして、いつまでも元気に自立した生活を楽しんで暮らしたいものです。このためには、体力の維持のための運動と栄養がとても大切です。

この時の運動は、記録を争ったり、大きな大会で優勝を勝ちとるのとは違います。どんな運動も、やり方を間違えたり過剰だったりすると、スポーツ障害と言う体の傷害を起こす場合があります。またどんなに体に良いといわれている運動もその人に合った運動でなければ体を痛めてしまう結果となります。

今回から、何回かに分けていつまでも元気に自立した生活が出来るように、要介護状態とならないため(介護予防)の運動と栄養について具体的な例を挙げてお話をしていきましょう。

 

●まずは正しい姿勢で楽しくウォーキングから始めてみましょう。

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健康の維持、促進のための毎日の運動が大切なのはわかりましたが、実際に何の運動から始めたら良いのか戸惑ってしまう方もきっと多いのではと思います。ウォーキングやジョギングは特別な道具も必要ないし、一人でも今日からだって始められます。そして、歩き方なんて教えていただかなくてもできるかも? もっとも手軽な運動(ウォーキング)から楽しく運動を始めましょう。

 

ウォーキング・エクササイズを始める前に注意があります。

歩くことは、人間にとって、基本的な動作であり、誰に教えてもらうことなく、自然に歩きだした本能的動作であります。しかし、今回の健康の維持増進を目的に行うウォーキング・エクササイズ(歩行運動)を実施するときは、日常の生活で行っている歩行動作とは区別した運動と考えます。健康のためのウォーキング(歩行運動)をするならば、運動の効果のあげるために、正しい姿勢で正しいフォームで行いましょう。そのために、歩く前に立位姿勢をチェックしましょう。よい姿勢で立つことは整形外科医の立場から言うと、腰痛や肩こりの予防になります。

腰痛で来院される方の多くは、不良姿勢が腰痛の原因になっています。正しい立位姿勢が出来ると今まであった腰痛や肩こりが改善しますのでとても大切です。

図1を見てください。人は脊椎動物ですので柔らかいS字状をしている脊椎の柱が、家でいうなら大黒柱の役目をして支えています。脊椎は椎間板といった柔らかい組織がそれぞれの26個の固い椎体骨の間に入っていて、前後左右に柔軟に曲げられる構造をしていますので、脊椎の柱を意識して体の中心にもって来る姿勢をとれば、腰や肩にとって効率が良くて、負担の少ない立ち方になります。つまり腰痛を生じない立位姿勢となります。皆さんは、よい姿勢というとすぐ腰をそらせますがこれは、間違いです。骨盤を出来るだけ水平に、腰はそらせるのでなく腹筋と背筋を使って上に伸ばすように、丹田という上腹部で体を支える感じで、腹筋に少し力を入れて引く感じです。顎を引いて、胸は、張って、肩は力を抜いて下げます。壁に背中を付けて姿勢をチェックしてみてください。腰の後ろでは、壁との間は手のひらがやっと入る程度です。皆さんは腰をそらせすぎのひとが多くて、腰痛の原因になっています。この姿勢で少し前に傾ければウォーキングフォームの完成となります。では歩き出してみましょう。次回は歩行のやり方とその時の注意をお話ししましょう。

 

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