整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

介護予防としての運動と栄養<第2回> ウォーキングの速度と具体的なやり方 ≪目標は1日8,000~10,000歩!≫

2013.05.01
カテゴリ:ウォーキング
不適切な食生活と運動不足によって内臓脂肪や皮下脂肪が蓄積すると、糖尿病、高血圧、脂質異常症等の生活習慣病の発症の原因となります。さらに、この複数の生活習慣病が合併すると、全身の血管の動脈硬化が徐々に進展し、重症化すると脳梗塞、心筋梗塞、透析を要する腎症等に至るリスクが高まることが指摘されています。このような状態をメタボリックシンドロームといいます。生活習慣病の発症を予防し、さらなる重症化となるメタボリックシンドロームの発症を防ぐためには、身体活動量の増加と習慣的な有酸素運動を行うことが有効です。

普段から元気に体を動かすことで、骨格筋や骨が丈夫になりロコモティブシンドローム、がん、うつ、認知症、その他生活習慣病などになるリスクを下げます。ウォーキングエクササイズを毎日必ず行うことは、適度の運動習慣をつけることになり、生活習慣病のリスクを下げて健康寿命をのばします。

 

では効果の得られる適切な量はどの程度なのでしょう。

生活習慣病発症予防に効果のある歩行の運動量は、体重60kgの場合約200Kcal、体重70kgの場合約250Kcalと言われていますが、現代のオートマチック化された日常生活では1日200Kcal~250Kcalを身体活動で消費することは困難です。

低強度で意識されない日常生活での歩数は2,000~4,000歩と言われます。それに加えて毎日の運動(特にウォーキング・約6,000歩)を行って合計8,000~1,0000歩とすることによって消費カロリーを増加させることが生活習慣病の予防に有効なのです。



≪具体的な方法≫

ウォーキングエクササイズは、運動負荷をかけて心肺機能の向上と消費カロリーを増やして生活習慣病の発症のリスクを下げる目的で行います。少し汗ばむ程度の運動負荷をかけましょう。

1、   よい姿勢をこころがける。(前回に説明をいたしました。)

2、  肩に力を入れない。(肩に力を入れると、呼吸が浅くなり、楽に腕が振れなくなる)

3、  膝を伸ばして歩幅を少し(5cmくらい)大きくする。

ウォーキング

武井正子:全国老人クラブ連合会シニアスポーツリーダー研修会テキスト2003より



4、  日常生活の歩く速さ1分間80~110歩より少し早目の1分間100~120歩のスピードで歩く。(歩幅の個人差もありますが、だいたい速度は80~120m/分程度)

歩くスピードと標準的歩幅

宮下充正:ウォーキングブック・ブックハウスHP2006より



 

≪毎日の目標歩数≫

・日常生活も含めた1日の目標歩数の目安は8,000~10,000歩。

・ウォーキングエクササイズとして18歳~65歳の場合、1日に6000歩歩けば有効(約1時間)。65歳以上の高齢者の場合は1日40分程度の歩行を目標に各自の身体能力に合わせて行う。

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厚生労働省:『アクティブガイド -健康づくりのための身体活動指針-』より



 

≪安全のために≫

誤ったやりかたで体を動かすと思わぬ事故やけがにつながるので注意が必要です。

□からだを動かす時間は少しずつ増やしていく

□体調が悪いときは無理をしない

□病気や痛みのある場合は、医師や健康運動指導士などの専門家に相談する

 

脇田整形外科では、整形外科医が身体的チェックを行い健康運動指導士の資格をもったインストラクターによる運動指導を行っています。