整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

知っていますか? 「フレイル」と「サルコペニア」(2)

2017.02.15
カテゴリ:栄養
健康長寿であるために、避けてほしい「フレイル」と「サルコペニア」。

「フレイル」は虚弱という意味で、「サルコペニア」は筋肉減少症のことだと前回紹介しました。

サルコペニアが進むと身体活動の低下を招き、骨粗しょう症、うつ症状、低栄養などの原因も重なり、フレイル(虚弱)になります。

では、どうすればこれらの症状を防ぐことができるのでしょうか?

「フレイル」や「サルコペニア」を予防するのに大切なのは、「筋肉」を減らさないようにすることです。そのためには、「栄養」と「運動」の両方に気をつけましょう。この片方が欠けてしまったら、筋肉をうまく作ることができません。また、夜、きちんと睡眠がとれているということも、筋肉づくりには大事なことの一つです。

はじめに「栄養」についてですが、食事量が足りているかということを一番に考えましょう。体重が急に減るようなことがあると危険です。食事の摂取エネルギーが常に足りない状態が続くと、身体は生命を維持することを最優先にするため、筋肉を作るところまでエネルギーがまわらなくなります。筋肉は常に作り替えられているので、新しく筋肉が作られないと、結果として減ってしまうことになります。まずは1日3食、しっかり食べるようにしましょう。

そして、次の3つを心がけてください。

 朝食、昼食、夕食に主食・主菜・副菜を揃える。

  



② 乳製品と果物を1日1回は摂る。



③ 食材は色々な種類のものを多品目摂る。

主食というのは、ご飯・パン・めん類のこと。ご飯なら毎食1膳は必ず食べてほしいと思います。

主菜は肉・魚・卵・大豆製品を中心としたおかずで、毎食1皿を目安にします。

副菜は野菜・海草・きのこ類を中心としたおかずで、1日小鉢で5皿が目安です。毎日の食事で、これができているかどうかを確認してみましょう。

毎食、主食・主菜・副菜を揃えるのは大変かもしれませんが、卵や納豆、ツナなどの缶詰、トマトなどの生野菜、海草などの乾物を常備しておくと、時間のないときでも手軽に準備することができます。

また自宅で作るばかりではなく、惣菜を利用したり、外食したりすることも、普段作らないものが食べられ、外に出て人と会うことにもつながり、お勧めです。

ご飯類を太るからといって控えている人もいるかと思いますが、主食は適量食べることが重要です。エネルギー源となる主食は、不足すると、その代わりに筋肉を分解して、エネルギー源として利用してしまいます。つまり糖質制限食を行うと、フレイルやサルコペニア予防のために必要な筋肉が減ってしまうのです。

  

朝食と昼食に主菜がなく、乳製品を用意していない献立だったので、あくまでも1つの例ですが、朝はゆで卵を足して、飲み物を牛乳にし、お昼はおにぎりを納豆ご飯に、野菜の小鉢をプラスする。夕食はこのままでも良いのですが、味噌汁に豆腐を入れたり、根菜の煮物に鶏肉を足したりすると、筋肉の材料となるタンパク源もより多く摂れて、さらに良いと思います。

また最近の研究では、ビタミンDが、骨を丈夫に保つカルシウムの吸収を助けるだけではなく、タンパク質と一緒に摂ると、筋肉がより多くできるというデータが出てきているので、意識して摂るようにすると良いでしょう。ビタミンDは、鮭やさんまなどの魚類、卵黄、しめじなどのきのこ類に含まれています。

もう一つ大切な「運動」については、ウォーキングがお勧めです。

1日20分位から歩いてみませんか?それも難しい方は、日常生活での活動時間を増やすように気をつけてみましょう。たとえば、家事を少し多めにするとか、なるべく階段を使うというようなことです。とにかくこまめに身体を動かす工夫をすると良いと思います。

筋肉トレーニングやストレッチもお勧めなので、脇田整形外科のメディカルフィットネスに来て、効果的な運動方法をスタッフに教えてもらいましょう。

健康長寿であるために、今回紹介したような食事や運動を実践し、より健康的な生活を送っていただきたいと思います。

管理栄養士・健康運動指導士  伊藤 久子