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理学療法士のリハビリ記録 カルテNo.6 頭の位置って自覚しにくい? F様

2020.08.05
カテゴリ:リハビリテーション

 「良い姿勢」というと背中を伸ばすことが一般的に言われますが、実は頭の位置がとても重要です。1は利用者様の姿勢の変化の写真です。家で座って過ごすことが多かったために不良姿勢になっていました。左臀部痛を生じたため、頭の位置にかかわる部位の理学療法を行った結果、姿勢・痛みの改善が見られました。

 

 

図1 理学療法前後の座位・立位姿勢変化
介入前は頭の位置が前にありますが、介入後は後ろに修正されている

 

 身体の上半身の重さが足に乗るため、互いの位置関係と症状が関連していることは珍しくありません。特に頭の位置は姿勢を維持するのにとても重要です。日常生活で頭を前に倒したままテレビを見たり本を読む時間が長くなると、頭を支える筋肉が固くなるため上半身の動きが悪くなります。この状態でがんばって運動を始めると歩行時のバランスがとりにくくなり症状を誘発します。

 特に、以前股関節の手術をしている利用者様であったため、股関節の動きを背骨の動きでカバーすることが難しくなり上半身がずれた状態で立っていました。そこで、股関節の柔軟性よりも優先して頭の位置を修正するように理学療法を実施した結果、歩行時の左臀部痛の軽減が認められました(2)。このように痛みの場所にとらわれず身体全体として動きの改善を図ることが重要な場合もあるのです。

 

2 理学療法前後の歩行動作変化
左足の真上に体が乗るような形となり左臀部への負担の軽減につながった

 

このことは決して高齢者だけではなく、最近のコロナによる在宅時間が長くなった一般の方や子供でも多く見られます。簡単な予防としては同一姿勢を30分以上続けずに体を揺らしたり、立ち上がることが重要です。軽く上半身を左右に捻ったり左右に倒す運動(3)をおすすめします。痛みを我慢したり、めまい等の違和感が生じる場合は中止します。

 

 

3 セルフエクササイズの紹介
背骨の中間付近を意識して全身が連動するように軽めに動かします

 

「良い姿勢」というのは無理に胸を張り背中を反ったりすることではなく、座位姿勢をご自身で修正することが重要です (4)。頭が良い位置にくると呼吸が楽になることもチェックポイントになります。

4 座位姿勢の自己修正
みぞおち部分を無理なく前上方に持ち上げ、顎を引くイメージです

 

 このように、頭の位置がずれた状態で運動不足が続くと全身のバランスがくずれ、痛みや不具合が生じることがあるため注意してください。紹介したような軽い運動がとても有効です。症状がなかなか改善されない場合や、どのような運動が自分に適しているか分からない場合は整形外科医、セラピストにご相談頂けると良いかと思います。

脇田整形外科 理学療法士 土屋 博貴