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96号(仲町台編) 不随意運動を生じる脳神経疾患について

2021.02.13
カテゴリ:脳神経疾患について

   今回も原先生に脳神経疾患で代表的な”手がふるえる”症状についてのお話をいただきました。“ふるえ”にはいろいろな種類があり、原因も症状もさまざまであることを詳しく説明していただいています。

 

不随意運動を生じる脳神経疾患について

 

皆さんは極度に緊張したときに手が震えたことはありませんか? 交感神経の過剰な興奮による震え(振戦)は生理的なもので、だれにでも起こりうる現象です。 しかしあまり緊張する場面ではないのに繰り返し手や足が震える場合には注意が必要です。 振戦を主な症状とする病気に“パーキンソン病”があります。

 

詳しくは別の機会にお話ししたいですが、パーキンソン病(PDの振戦の特徴として①安静にして手を動かしていないときにむしろ出現しやすい、 ②初期では左右差が出やすい、  ③比較的ゆっくりとした動きで典型的には指で小さいものを丸めるような動きが出る(Pill rolling Tremor)、といわれています。

パーキンソン病(PD)は50代以降の発症が多いとされていますが、同じような手の震えで中年以降に発症する震えに“本態性振戦”があります。 “本態性”とはほかの病気でもときどき使われる言葉ですが“原因不明で体質的なもの”と考えてください。 本態性振戦では手指の位置や動作で震えが増強する点がPDと異なりますが、何より震え以外の症状はなく進行もしません。4割ぐらいの方は血縁者に同じ症状が見られますが、遺伝がはっきりしない方も多く書字や箸が持ちにくいなど生活上の問題を自覚することも多い病気(体質)です。 6,7割の方は内服薬で改善がえられますが、難治例では手術や超音波での焼却術(FUS)も最近では行われるようになりました。 

振戦に似た動きですがより素早いピクッとした動きがみられることがあります。 夜間就眠直後にからだがビクンと動いて目が覚めた経験がある方もいらっしゃると思います。 これは“ミオクローヌス”とよぶ不随意運動です。やや専門的になりますが例えば手が震える場合、手を曲げる筋肉(屈筋)と伸ばす筋肉(伸筋)が交互に収縮するのが振戦で、同時に収縮するのがミオクローヌスです。 振戦は主に大脳の基底核と呼ばれる場所の問題ですが、ミオクローヌスは大脳全体や脊髄などさまざまな場所の異常で生じます。 

別の不随意運動として顔面の動きがあります。 片方の顔面(目や頬部、口のまわり)にクシャッとした強い動きが繰り返す方がおります。これは”片側顔面けいれん“で脳の中の顔面神経に動脈が触れてしまうことで生じます。 まれに動脈瘤や腫瘍でも生じるため、一度はMRIで確認が必要です。 内服で少し改善されますが、副作用で十分な治療ができないことも多く、“ボトックス注射”を行うことで数か月で完全に治療することができます。

顔面全体でなく目の周囲の一部にピクピクした動きが繰り返す現象は専門的には“ミオキミア”とよび多くの場合はストレスやプレッシャーでおきる現象です。通常ストレスがなくなれば自然になくなります。 首や肩が不自然に曲がってしまう“痙性斜頚”も時々みかけます。 これは“ジストニア”と呼ぶ不随意運動の一種で、異常な神経回路が神経内にできることが原因とされています。 これも上記の“ボトックス注射”で治療することができます。 ほかにもさまざまなタイプの不随意運動がありますが、その原因・治療方法もそれぞれ異なります。 

“震えるのは年のせい”としてあきらめず、症状が日常生活上ストレスに感じる場合は脳神経内科にご相談ください。

 

当院の脳ドックについては以下のホームページでご紹介しています。

http://nmd.welcare.or.jp/hara/noudoc

ウェルケアはら脳神経内科 院長 原 一(はら はじめ)