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102号 腱鞘炎(ばね指)の新しい治療法

2022.02.14
カテゴリ:手の症状 腱鞘炎(ばね指)

今回は指の曲げ伸ばしに痛みを生じる腱鞘炎について新しい治療法をご紹介します。

従来は、安静、湿布、塗り薬、局所注射で治らないときは手術が行われていましたが、指のストレッチ(運動療法)で改善を図る新しい方法です。腱鞘炎でお困りの方は試してみていただければよいと思います。千葉大学医学部の整形外科グループでこの方法の実践を始めている若いドクターに寄稿していただきました。

医療法人社団裕正会 理事長 脇田 正実

 

 

はじめまして。千葉大学医学部附属病院にて整形外科医をしております脇田浩正と申します。私は医療法人社団裕正会理事長脇田正実の息子です。

若輩者の私ですが、こもれびの1面掲載という大役を仰せつかりましたので、誠に恐縮ながら書かせていただきます。

 

 指の曲げ伸ばしは前腕にある筋肉が縮まり、筋肉についている腱が引っ張られることにより起こります。その腱をうまく作用させるために、指には腱鞘という、腱を骨に押さえる構造が存在します。

「ばね指」はその部分の腱や腱鞘が炎症を起こし、腫れてしまうことから腱と腱鞘がひっかかり、指を曲げた際に曲がった状態で止まってしまったり、その時に痛みがでてきたりする病気です。

指を曲げる腱や腱鞘の炎症が病態であるため、指を使いすぎたりすると起こりやすいです。女性ホルモンのバランス悪化により腱が腫れやすくなるため、更年期の女性や妊娠出産期の女性にも生じます。糖尿病や関節リウマチ、透析患者さんにもよく発生します。母指、中指に多く、薬指、小指、人さし指にもみられます。

 

治療法

 

 

治療法としては炎症が起きている状態なので、局所の安静や痛み止め、ステロイド注射により炎症を改善させる方法があります。手術で腱に一番引っかかりやすい腱鞘を切開する方法もあります。

私が患者さんにおすすめしている治療法はストレッチです。腱を曲げることにより、腱鞘を広げる方法です。指の根元をしっかり曲げて、腱に自動屈曲力を発生させることにより、その関節での反作用力と合わさって腱鞘を広げてくれます。腱鞘が広がれば、腱と引っかかることが少なくなりますので炎症が収まります。


 

具体的には人さし指から小指の場合にはペットボトルの蓋を縦に手のひらに置いてそれを潰すように力を加えます。母指の場合にはペットボトルの蓋を横にして手のひらに置いてそれを潰すようにします。指の根元をしっかり曲げなければ、腱鞘をひろげる力がうまく伝わりません。30秒押し続けるのを1セットとして110回以上行うことで効果が出てきます。お風呂上がり等、指が温かい時には痛みを感じづらいのでおすすめです。痛くてできないという方には注射を行ない、痛みを取ってからストレッチをやってもらうようにしています。


 

ストレッチにより症状が改善する患者さんが多いです。ばね指でお困りの方にはぜひお試していただきたい方法です。

 

千葉大学医学部附属病院 脇田浩正