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103号 手根管症候群の話

2022.04.18
カテゴリ:手の症状

今回も、現在千葉大学で手の外科診療を行っている脇田浩正先生に手のしびれを生じる手根管症候群について詳しく説明をしてもらいます。

医療法人社団裕正会 理事長 脇田 正実

 

 

手根管症候群とは正中神経という神経が手首にある手根管というトンネル内で圧迫された状態をさします。

手根管は手関節部にある手根骨と横手根靭帯で囲まれた伸び縮みができないトンネルで、その中に1本の正中神経と指を動かす9本の腱があります(図1、図2)。

  

 指の使いすぎ等で腱が腫れてしまうと手根管内で正中神経が圧迫され、神経症状がでてきます。他には、手首の骨折後や、糖尿病、関節リウマチにより症状が出現する場合があります。

 

 

症状としては親指、人差し指、中指、薬指(親指側半分)の3本半の指がしびれてきます。朝、明け方にしびれているのが特徴的です。しびれをよくするために手をふるような仕草で改善することがあります。症状が強くなると親指を手のひらから立てる力が弱くなります。そのため、小さいものを掴んだり、ボタンをかけたりすることが難しくなります。

 

 

 一般的に成人における手根管症候群の有病率は3%程度といわれています。女性に多く、概ね男女比は1:3と言われています。

 手根管症候群で治療を行わなかった場合には20%は症状が改善した一方で、20%程度は悪化したという報告があります。

 

治療には、安静にする装具療法、内服により症状を抑える服薬療法、手首に注射を行う注射療法、手術を行い横手根靭帯を切開する手術療法があります。

手術を行うことで、一般的に術後3ヶ月で症状の改善は見込めますが、重症な例で神経が圧迫される期間が長期になると、改善するまでに時間がかかります。また、親指の動きが悪くなっている場合には、手術を行っても動きは回復しない場合があります。

手根管症候群と考えられる指のしびれ、親指の動かしづらさを自覚される方は、病院に受診し、診療を受け、手根管症候群の診断を受けることや、評価されることが重要です。その上で治療方針を医師と相談する必要があります。

今後は治療法について詳しく説明します。

千葉大学医学部付属病院 脇田 浩正