105号 手根管症候群と「心アミロイドーシス」という病気について
今回は再び手根管症候群の原因についてのお話です。手根管症候群を発症した人の中には原因として重大な病気が隠されていることもあるようです。手のしびれ等が生じたら整形外科のクリニックで一度は診察を受けることも大切です。
医療法人社団裕正会 理事長 脇田 正実
手根管症候群と「心アミロイドーシス」という病気について
再度、手根管症候群のお話をさせていただきます。
最初に手根管症候群の原因は、指の使い過ぎ、手首の骨折、糖尿病、関節リウマチなどがあるとお話させていただきました。
ただし、他の原因もあることもわかってきました。
最近、心アミロイドーシスという病気が認識されるようになってきました。アントニオ猪木さんや楽天初代監督の田尾安志さんがこの疾患にかかっているということを公表したことにより、認識がされるようになってきました。
アミロイドーシスとはアミロイドという異常な蛋白質が全身に蓄積することにより、多様な症状を呈します。心アミロイドーシスとは、そのアミロイドが心臓に蓄積し、心臓の機能が低下、進行すると心不全に至ってしまう病気です。
一部の心アミロイドーシスは、その7年ほど前に手根管症候群を発症している割合が40~50%であることがわかってきました。
さらには、そのアミロイドーシスは、今まで治療できませんでしたが、近年、治療薬が開発されました。その治療薬は診断早期に使用することでより一層、効果が得られることもわかってきました。
そのため、心アミロイドーシスの前駆症状であります手根管症候群発症時に診断することで心アミロイドーシス治療ができる可能性が高まってきています。
では、どのように診断するかといいますと、手根管手術を行なった際の、一部の組織を顕微鏡で検査を行うことにより、その部位のアミロイド沈着を確認し、アミロイドーシスと診断ができます。
まだまだ、わかっていないことが多くあります。断定的なことは言えず、今後も研究が続いていく発展途上な分野です。
それでも、手根管症候群には、全身につながる他の病気が隠れていることもあることは確かです。そのため、手の痺れ等でお困りの際には、まずは病院で医者に相談することが肝心であると考えます。
千葉大学医学部付属病院 脇田 浩正