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106号 膝関節の痛みと治療法について

2022.10.17
カテゴリ:膝痛

今回からは年とともに生じる膝痛についてその治療法をお話しいたします。治療法を理解するには膝関節の構造について理解しなければなりません。

最近、テレビの宣伝でグルコサミンとかコンドロイチンとかヒアルロン酸、さらにはコラーゲンンやプロテオグリカンなどの様々な高分子化合物が入ったサプリメントを盛んに宣伝しております。これらの高分子化合物を内服することが本当に傷んだ膝関節の修復に役に立つのでしょうか?

 

 

 

個人的には経口摂取してもそれらの物質は関節にそのまま到達しないと考えますが、これらの高分子化合物は実は関節軟骨を構成している化合物なのです。詳しくは関節軟骨の構造と機能を知らなければなりません。

 

<関節構造について>

では関節軟骨についてご説明しましょう。(図1 関節の骨の端には関節軟骨(濃いブルー)があり、関節包(ピンク)で作られた関節の空間に関節液(薄いブルー)が満たされております。この関節液は関節軟骨を栄養しており、さらに軟骨の潤滑に重要な役割を担っています。この関節液は関節包の血管網から常に分泌されかつ、吸収され、常に循環しております。

2は顕微鏡による軟骨組織像です。下方に軟骨下の骨組織が見られます。その上は軟骨の組織です。関節軟骨は軟骨細胞と軟骨基質から構成されています。軟骨細胞は軟骨組織内に点在して見える軟骨小窩内にあり、軟骨基質(マトリックス)を生産しています。軟骨組織内には血管、神経、リンパ節などは存在しません。

 

<軟骨基質の生化学的な成分構成について>

軟骨基質は顕微鏡では一見均一な組織にみられますが、生化学的には多くの高分子化合物が組み合わさって成り立つ組織です。

軟骨基質は水分(約70%)、および型コラーゲン(約15%)、プロテオグリカン(約10%)などから構成され、多量な水分を含有する構造になっております。

スポンジのように圧迫力が加わると内部の水分は表面に分泌され、また圧迫力が消えると水分を吸収して元の形に戻る柔軟な構造をしております。

図3 のように組織の構造を支えるおよび型コラーゲンとその間を埋めるヒアルロン酸とそこに接合するプロテオグリカン複合体が含水性の高分子構造であるため、多量の水分を含有しております。

 

皆様がサプリメントとして摂取していらっしゃるのは、糖がいくつも連鎖して作られたグルコサミノグリカン(GAG)を構成要素とした多数結合した高分子のヒアルロン酸およびプロテオグリカン複合体の一部であると考えます。

さらにこの部分の詳しい説明は次回とさせていただきます。

 

医療法人社団 裕正会 理事長 脇田 正実