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104号 手根管症候群の治療

2022.06.14
カテゴリ:手の症状

前回に引き続き手の外科を専門としている脇田浩正先生に手根管症候群の治療についてお話をいただきました。ご紹介する早期の保存療法で多くの方が改善しますが、中には症状が進んで手のしびれと指の動きに障害がある場合には手根管解放手術にて改善できます。

医療法人社団 裕正会 理事長 脇田 正実

 

 

手根管症候群の治療

 

手根管症候群とは前回お話ししたとおり手首の手根管という管の中で正中神経という神経を圧迫してしまうことで指のしびれが出てくる病気でした。

今回は手術を行う以外の治療についてお話します。

原因は腱を使いすぎて腱が腫れていることが多いため、まずは休ませることが大事です。休ませる方法としては夜間に手関節を安静にするために装具を装着する方法があります。朝方、起きたら手がしびれている方や、しびれで目が覚めてしまう方には有効な方法です。手首の角度を固定することにより、手根管内の圧力を上げないことができます。

 

 

また、手根管内に注射を行う方法があります。手根管の患者さんは手根管内の腱の炎症とむくみがある状態のことが多いため、炎症をとる注射を行うことで正中神経の圧迫を改善させます。

最後に運動療法です。手根管症候群の患者さんは正中神経が圧迫されており、神経が動きづらい状況になっています。そのため、神経や周囲の腱を動かしてあげることで、腱周囲のむくみを減少させ手根管内圧を減少させる、神経の血流をよくする効果があると言われています。

 

腱を動かす5つの指の滑走運動(2)や、正中神経を滑走させる(3,4)方法があります。腱の滑走運動は5つの動作を1セットとし、5セットを1日5回以上、神経の滑走運動は1回7秒間、5セットを1日5回以上行います。神経を伸ばし続けていると逆にしびれがでてくることもありますので、伸ばし続けている時間を長く取るのではなく、反復することにより神経の滑走を意識することが重要です。

 

 

 

(図24の出典:「オルソペディクス・手根管症候群の治療トピックス Vol33 No.4」)

 

 

ぜひ試していただけますと幸いです。ただし、重症な手根管患者さんの場合、これらの方法は効果が薄いですし、手術を行ういいタイミングを逸してしまう可能性もありますので、手指のしびれがある患者さんはまず来院していただき、医師の評価を受けてから治療法を検討してもらうことが大事です。

千葉大学医学部付属病院 脇田 浩正