117号 小児の整形外科疾患 ~とくに股関節疾患について~「ペルテス病の診断」
ペルテス(Perthes)病の診断
主症状は股関節痛とこれに起因する跛行(歩行障害)です。さらに患側股関節の屈曲・回旋、等の運動制限が見られます。発症の初期には、ペルテス病と単純性股関節炎との症状が類似しているので、注意深い経過観察が必要です。発病初期の股関節XPでは、大腿骨の骨、軟骨に異常を認めることは稀です。経過中、股関節側面XPにて骨頭前面に不整像が見られることもあります。発症初期のMRI検査は鑑別診断にとても有効です。ペルテス病の場合は、発症初期にMRIにて壊死している部位にT₁およびT2強調画像で信号強度は低下が見られます。(図1)
■ペルテス病は、どんな病気ですか?
大腿骨頭の骨端症です。原因不明の大腿骨骨頭部の血行障害により発症します。発症年齢は2歳から13歳までで、好発年齢は6歳から8歳です。男児に多く、男女比は5:1と言われています。
幼少期の大腿骨頭骨端核の栄養は外側骨端動脈に依存しています。したがって、この動脈が閉塞すると骨頭が壊死します。
動脈が閉塞を起こす原因は不明です。壊死に陥った骨頭部の骨、軟骨は、分節化や扁平化等の変形を生じます。その後、壊死部位は、時間をかけて徐々に修復していきますが壊死部位が最終的に完全に修復するのに、およそ3年から4年を要します。
ペルテス病は、大腿骨近位骨端部の壊死範囲により4つのグループに分類されています(Catterall分類)。壊死範囲が大腿骨骨頭の全体に及ぶほど重症と考えられます。
■治療と予後について
治療の最大の目的は、壊死に陥った骨頭が、圧潰を生じる事のない様にすることです。そのためには、早期の診断と治療が重要で、骨頭が圧潰する前に負担を避ける治療が開始されます。発症の早期では、滑膜炎を生じている時期で、入院、安静で、ベッド上で患肢の牽引を行います。その後、関節炎症状が消退してから、保存療法として、装具を用いての大腿骨頭への免荷を行います。大腿骨頭の修復過程で、もとの形状に戻りやすい様に股関節を外転かつ内旋位を保ちます。(外転免荷装具)、保存療法は、治療が数年と長期にわたるため患者の根気と家族の理解が必要です。
保存療法が奏功しない場合に、手術療法が行われます。また治療期間の短縮のため大腿骨内反骨切術を」行い、寛骨臼蓋に骨頭が適切に収まった状態が保てる事により正常に近い骨頭に修復します。これらのさまざまな治療を行っても、骨頭変形が残存して股関節の機能障害が残存する場合もあります。一般的に5歳以下で壊死範囲が狭いグループ1~3までの児童の予後は良好とされています。
参考書籍:『整形外科MOOK14 ペルテス病 金原出版刊』
『イラストで見る股関節疾患 第一三共株式会社刊』
医療法人社団裕正会 理事長 脇田 正実