整形外科医の日常診療から Orthopedic surgeons blog

関節のお話<軟骨組織の構造と機能 軟骨基質(マトリックス)について>

2016.02.16
カテゴリ:関節
前回は老化した関節の修復と予防方法を知るために、関節の機能と構造についてご説明しました。

今回は、関節組織そのものについて詳しく見ていき、軟骨の重要な構成要素であるグルコサミンやコンドロイチンがどのように存在するか、それを摂取することによって軟骨の修復に役立つのか否かをお話ししましょう。

 

まず、関節内の軟骨組織の構造は、建物でいえば、コラーゲン線維(Ⅱ型)が、構造を支える鉄筋の柱であれば、軟骨基質は、その間に詰め込まれたコンクリートのようなものと言えます。その中に軟骨細胞が点在しています。(図1)

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軟骨組織の主要な部分を構成している、この軟骨基質(マトリックス)は、プロテオグリカン複合体(図2)という高分子の化合物からできています。プロテオグリカンの複合体は、分子内で多量の水分子と結合しています。そのため、軟骨表面が圧迫されると、スポンジのような柔軟な構造と、そして、そこから浸み出た水分が、氷の表面のように、軟骨表面の潤滑の役目をします。これにより、関節が動くときの関節表面に生じる、衝撃力や、すり減りに対して、守る働きをしていると考えられます。



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このプロテオグリカン複合体を構成するヒアルロン酸は軟骨細胞から合成される事が確認されています。

補助食品のグルコサミンやコンドロイチンとは、プロテオグリカン複合体の構成物質であるヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸、ケラタン酸などの事を言っています。

皆さんが、関節に良いと言われて飲んでいる補助食品のグルコサミンやコンドロイチンは、経口的に摂取しても、本来、血行のない関節軟骨部には達しません関節内に滑膜を通過して関節液として到達することもありません。従って、グルコサミンやコンドロイチンは、軟骨細胞から合成されるので薬のように特別に摂取しなくても不足することはないということになります。

 

次回は、関節の機能に重要な役目を果たす関節液の蘇生と産生についてご説明しましょう。