NOW from Clinic

112号 小児整形外科の先天性三大疾患 ~股関節脱臼~

2023.10.11
カテゴリ:小児整形外科

整形外科には小児先天性三大疾患があります。先天性股関節脱臼、先天性筋性斜頸、先天性内反足の三つです。そのうちの一つ先天性股関節脱臼は、最近では呼び名が変わりました。最も代表的疾患ですが、今では先天性という言葉は使用されなくなり、発育性股関節脱臼または発育性股関節形成不全といわれるようになっています。生後しばらくして発症したものがあることが分かった今、アメリカ社会において先天性という名称では生まれたときにわからなかったとなると、後々生直後に診た医師に対して訴訟が起こされることがあるため、発育過程で起きうるものがあるなら、名前を変えるべきだとのことでつけられたものです。名前はともかく日本でも約1000出生に1人くらいの頻度で見られます。本疾患は減少しているといいながらも年に100人程度脱臼が見逃されているとの報告もあります。

今回はこの先天性股関節脱臼についてとお子さんを育てていく上で注意すべき点などをお話します。

 

■先天性股関節脱臼とはどんな状態?

先天性股関節脱臼(本文中では昔ながらの先天性股関節脱臼という言葉に統一させていただきます)とは、生下時もしくは生後に大腿骨と骨盤の位置関係が悪く、股関節が脱臼をしている状態を指します(図1)。

しかしかつては“いわゆる先天性股関節脱臼”と言って脱臼以外にも亜脱臼や臼蓋形成不全といった疾患もひとまとめにして考えられていました。これらは一連の病気として考え、その重症度の違いであると認識していただくとよいかと思います。

 

 

■原因は?

本疾患が起こる原因はまだよくわかっていないことが多く、原因が単一ではなくいろいろな要素が複合して発症するようです。出生前の環境因子としては、骨盤位を代表とする胎位の異常、多胎妊娠、子宮筋腫、羊水過少などがあります。発生頻度が女児7に対して男児1と圧倒的に女児に多い疾患のため、ホルモンも関係しているとされていますし、親子の顔かたちが似るのと同様に骨格も似ていることなど遺伝の関与も報告されています。また、出生後の環境因子としては、窮屈なオムツや肌着、抱き方や不適切なスリングの使用などがあります。これは股関節がつよく曲げられた位置、あるいは伸ばされた位置で固定されてしまうことから、先天性股関節脱臼が発症すると考えられています。

 

■放置するとどうなるの?

先天性股関節脱臼が診断されずに放置されると股関節の成長が障害されます。また治療が適切に行われなければ、股関節の変形を起こし長期的な機能障害につながる恐れもあります。そしてゆくゆく人工股関節手術が施行されることもしばしばです。人工股関節置換術手術を受けた人の大多数が、本疾患に由来することも分かっています。そのため、乳児健診などを通して病気を早期に発見し、治療を行うことが重要です。

 

予防はできるの?

 原因に生後の因子があるなら予防できるのでは?と当然疑問がわきますね!予防については赤ちゃんの抱き方が大きく関与するとされ、かつて京都の石田先生が熱心に研究されて“コアラ抱っこ”(図2)を提唱されています。

 

 

 

診断はどうするの?

先天性股関節脱臼は、乳児期早期の段階から症状が出現しており、両側の脚の長さが異なることで気付く場合があります。脚の長さが異なることから立て膝をすると膝の高さに左右差が診られたり、股関節を伸ばした際に大腿部のシワのより方に左右差が生じていることが目安となります。また、先天性股関節脱臼では脚を広げることが難しくなるため、赤ちゃんらしく脚を広げた姿勢をとらずに、脚が内側に向きがちになります。さらに大腿骨頭が寛骨臼にきっちりとはまっていないことを反映して、脚を開く動作をすると脱臼の感覚(クリック音)を指に感じることもあります。そこでまず小児疾患に詳しい小児整形外科医の受診がもっとも最適ですが、少しでも怪しいと思われたらまずは整形外科医に相談することをお勧めします。最近では乳児(8か月までは特に)においては超音波を使用した診断が有効です(図3)。時期を逸するとレントゲン検査が必要となります。

 

 

■放置するとどうなるの?

先天性股関節脱臼が残存したままさらに時間が経過すると、股関節が不安定なために自立歩行ができない場合もあります。また、歩行が可能な場合であっても、歩行が不安定であったり、すぐ転倒したり、脚の角度が左右で異なる、といった症状がみられることがあります。最近でも歩き始めてからおばあ様などに歩行がおかしいのでは指摘され、3歳ごろになってようやく診断がついた、診断遅延例も時々報告されています。

 

治療はどうするの?

ではそうした脱臼の治療はどうしたらよいのでしょうか?当然ながら病気の状態によって治療法は異なってきます。軽度の脱臼であればRb(リーメンビューゲル)というバンドにて整復されます 。またこれにて整復されない際には牽引療法やギプス固定、手術を必要とすることもあります。これらは状態によって異なりますので、詳しくは専門医に相談されることをお勧めします。

 

治療しないとどうなるの?

時々見過ごされて、発見が遅れることもあります。先ほど述べた遅延例です。3歳になってから見つかると当然のことながら治療は難渋することが多いので、早期発見が大切です。しかし現実には3歳以上になって発見される症例も時々見られます。また治療されずに大人になる症例もかつては多く見られました。そうした放置例では時々成人してから人工関節を受けることもあります。当然ながら治療は困難となります。

 

次回は先天性筋性斜頸についてお話しさせていただきます。

 

 

おおぎや整形外科 院長 扇谷 浩文

 

 

<参考文献>

平成29年度日本医療研究開発機構研究費成育疾患克服等総合研究事業乳幼児の疾患疫学を踏まえたスクリーニング等の効果的実施に関する研究

研究代表者東京大学岡明  分担研究者信濃医療福祉センター朝貝芳美