115号 小児整形外科の先天性3大疾患 ~内反足~ その2
整形外科には小児先天性三大疾患があります。先天性股関節脱臼、先天性筋性斜頸、先天性内反足の三つです。これまでに前者二つの疾患について掲載してきましたが、今回は先天性内反足について2回目の掲載です。(1回目は114号をご覧ください。)
検査・診断
先天性内反足は、生まれつきの足の変形が明らかですが、最も簡単な診断は足が背屈しないことです。足の変形とは、症状の項目で記載したような内反、内転、尖足、凹足を指します。また、身体診察では、足に麻痺がないことを確認することも重要です。
先天性内反足では、足のレントゲン写真も重要で、足を構成する骨に異常がないかも診ておく必要があります。
鑑別診断
小児科で内反足と言われて来院する症例も多々ありますが、多くは足の内反位であり、背屈できるようなら急いで受診する必要のないものです。しかし背屈が不可能な症例では内反足を強く疑い、早急な受診をお勧めします。
先天性多発性関節拘縮症に伴う内反足は、下肢の他の関節拘縮、皮膚異常、筋肉の線維変性などもあり矯正が困難で注意が必要となります。
治療
先天性内反足は生直後から早急な治療が必要です。治療方法は、まず保存的な矯正ギプス固定です。この方法にても矯正が困難な症例では外科的な治療が必要となることが多い疾患です。
保存的な治療方法
徒手的に足の変形を矯正しながらギプス固定を行います。一度に足の変形をすべて矯正することはせずに、1週間程度の間隔を置きながら徐々に矯正を重ねます。最近はポンセッティ法という治療法が施行されることが多いです。
ある程度の矯正が達成された段階で、変形の再発を予防することを目的として、外転装具(かつてはデニスブラウン型装具)と呼ばれる装具を装着します。装着開始から3か月ほどまではほぼ丸一日装具を装着し、以後徐々に装着の時間を短くしていきます。夜間のみの装着もしつつ、3年間ほど治療を継続することが一般的です。写真はかつて使用されたデニスブラウン型装具です。
外科的な治療方法
変形の程度が強い先天性内反足では、手術療法が検討されます。腱や靭帯などを切断することで、治療を行います。最近主流となっているのはポンセッティ法ですが、この方法ではギプス治療の過程でアキレス腱の切離を並行して施行することも多くあります。この方法についての詳細は各医療機関にて伺っていただいたほうがよろしいかと存じます。
本疾患は上記の治療後も長期にわたって経過観察を要する疾患です。
おおぎや整形外科 院長 扇谷 浩文
参考文献:標準整形外科学 第9版 医学書院2007年1月発刊