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111号 【小児整形外科疾患】 小児の内反膝(O脚)、外反膝(X脚)~子供の下肢の発育と成長について~

2023.08.16
カテゴリ:小児整形外科

乳幼児の内反膝(O脚)、外反膝(X脚)を気にして整形外科外来を訪れる親子さんが多くいらっしゃいます。

子供の下肢の発育異常について診断するには発育と成長を理解する必要があります。そこで、子供の下肢の正常発育について少し説明いたします。

 

 

★下肢のアライメント(下肢軸)の計測

通常下肢のレントゲン撮影写真を用いて計測します。このとき大腿骨軸と下腿(脛骨)軸とのなす外側角をFTAFemoro Tibial Angle)といいます。

その角度が180度以上ならO脚傾向、180度以下ならX脚傾向と考えられます。では実際に多くの子供を経時的に計測した結果をご説明しましょう。

 

  

図1 膝関節

 

 

★発育による下肢軸の自然経過

表に示したものは外国の統計を参考にしております。生下時から乳児まで母胎内の肢位の影響もありO脚傾向が強く、このときを生理的Oと言います。その後、1歳から1歳半で立位歩行を開始するとともにX脚へと徐々に変化し、その傾向は通常は3歳時のピークまで続きます。この時期を生理的X脚と言います。その後、年長になるに従い徐々にO脚に近づいていきます。これは、成人の平均FTA176178度へと近づいていきます。この過程から大きく逸脱した下肢軸を呈する子供は注意が必要で、経過観察を要します。例えば、子供が3歳時にFTA180度の計測値が得られた場合は、将来O脚が残存する可能性があり、注意深く経過を見て、装具療法を行うことがあります。

 

図2 下肢軸の経年的推移

 

 

図3 子供の矯正装具   

                              

 

★病的O脚(Blountブラウン病)

Blount病は乳幼児から徐々にO脚が進行する代表的疾患です。軽症の場合、生理的O脚との鑑別は困難で診断に対しては長期間の経時的観察を要します。Blount病の場合は、O脚を生じるため装具療法もしくは多くは矯正骨切り手術を行う必要があります。その他、骨系統疾患(先天性疾患)および代謝性骨疾患に伴う内反膝と外反膝変形の報告が散見されますが、例えば骨幹端未形成症、マルファン症候群、モルキオ病などですが、その原因疾患を正しく診断することが重要となります。子供の下肢の正常な発育過程をよく理解した上での診察が求められます。

 

図4 病的O脚(Blountブラウン病)

 

 

医療法人社団 裕正会 理事長 脇田 正実